もしも犬や猫がお腹をこわしたら…「下痢」の原因や対処法

下痢は、犬や猫を飼っていれば「必ず遭遇する」といってもよいほど起こりやすい疾患です。「よくあることだから」とあまり気にされない飼い主さまも少なくないようですが、実は重大な疾患のサインの場合も。そんな下痢の原因や予防策、治療について、相模原どうぶつ医療センター(神奈川県相模原市)の獣医師・山内優樹がご説明します。

山内優樹 獣医師

東京都出身。鹿児島大学農学部獣医学科卒。 趣味は映画鑑賞。5頭の猫たち(みょん・しゃむ・みるみる・ぞんぴっぴ・はんぶんまる)と暮らす愛猫家。

《皆さまへのメッセージ》

一次診療だけでなく、二次診療で来院された患者さまにも貢献できるよう、日々の診療に取り組んでいます。病気の予防はもちろん、健康診断や普段の生活で気になることなどお気軽にご相談ください。

「よくある疾患」とはいえ軽視は禁物!

下痢は“老若男女”を問わず、どんな子にでも起こりうる疾患で、特に好発犬(猫)種があるわけでもありません。ただ、動物の種類や年齢に応じて、かかりやすい下痢の原因やタイプが異なります。

例えば、「消化管寄生虫の感染」、環境変化・長時間の移動や来客によって生じる「ストレス性の胃腸炎」、異物や刺激物の誤食による「急性の消化管障害」などを原因とする下痢が子犬や子猫にみられます。

一方、ホルモン疾患や免疫疾患による慢性的な症状(2週間以上続く)が老齢の子に起こることがあります。

下痢を起こすと、水分とともにミネラルなどの「電解質」と呼ばれる成分が体の外に出て失われます。そして腸には炎症も起きるため、消化吸収能力の低下や腹部の痛みが生じます。下痢を繰り返すことにより、肛門の周りがただれてしまうことも。

若齢や老齢動物の場合、下痢を放置することによって重度の脱水や低血糖、栄養失調に陥り、命を奪われる原因にもなり得ますので、決して軽視はできません。

「急性の下痢」は飼い主さまの注意で防げることも

犬や猫が人の食べているご飯を欲しがったので、つい与えてしまった…という経験はありませんか?人間が食べる物の中には動物の体質に合わないものも多く、それらが原因となって胃腸障害を起こすことがあります。

また、犬が散歩中に小石や枝などを誤食したり、ゴミ箱を漁ってタバコの吸い殻や焼き鳥の串、魚や肉の骨などを飲み込んでしまうことも珍しくありません。

こうした原因で起きる急性の下痢は何度も繰り返しがちなので、飼い主さまとしては「人間の食べ物は与えない」「誤食しそうなもの(ゴミ箱や灰皿、観葉植物など)に動物たちを近づけない、あらかじめ遠ざけておく」ということを徹底していただきたいと思います。

急性の下痢で受診された場合、動物医療機関は必要に応じて問診や糞便検査、レントゲン検査、腹部の超音波検査を行います。

誤食や寄生虫感染、ウイルスや細菌の感染による下痢の場合は、それぞれの原因を取り除くことを考えます。症状が重く、自宅での管理が困難な場合には入院していただく場合もあります。

寄生虫感染や誤食でない場合は、下痢止め薬の投与や療法食など、対症療法を選択することもあります。

「慢性的な下痢」は背景に深刻な原因が?

2週間以上にわたって下痢が続く場合、ホルモン疾患や自己免疫疾患、腫瘍性疾患などが原因となっている可能性が疑われます。より深刻な疾患に発展することも考えられるので、動物医療機関を受診された方がよいでしょう。

必要に応じて、血液検査やホルモン濃度の測定、腹部超音波検査による精査を行います。

原因が特定できない場合は、試験的な抗生物質の投与、「除去食試験」と呼ばれるアレルギー回避食への切り替えを行うことを考えます。さらに改善がみられない場合、全身麻酔下での内視鏡検査や、試験的な開腹による原因究明を行うこともあります。

検査の結果として、消化管リンパ腫などの腫瘍性疾患や炎症性疾患、それに副腎皮質機能亢進症や副腎皮質機能低下症、甲状腺機能低下症などのホルモン疾患が見つかることがあります。

腸炎や膵炎などの炎症性疾患は適切な治療によって治ることが多いのですが、腎不全やホルモン疾患、腫瘍性疾患の場合は短期間で改善することは少なく、投薬や点滴などによる治療を継続していく必要があります。

上でご紹介したもの以外では、コロナウイルスやパルボウイルスなどの「ウイルス感染」、大腸菌やカンピロバクターなど「細菌感染」、食物アレルギー、それに消化管をはじめとする臓器に生じる「がん」なども下痢を引き起こすことがあります。

ちなみに子犬や子猫の頃の寄生虫予防や、ワクチン接種によるウイルス感染予防は、下痢の予防にもつながります。

動物病院選びで“重視すべきポイント”

下痢の原因を探るために、まず大切なのは問診です。下痢のきっかけや生活環境、誤食のクセや病気の有無などの背景が分かれば、原因を特定する近道になります。そのため病院選びにおいては「主治医としっかりコミュニケーションが取れるかどうか」を重視されるとよいでしょう。

もちろん、下痢の症状と経過に基づく、適切な検査と治療を行うことも大切です。特に慢性的な下痢を繰り返しているような症例には、積極的な検査を行う必要があるので、「各種検査が行えるだけの設備が調っていること」も重要な要素といえます。

もし下痢の背景に別の疾患があったとしても、早期の発見・治療により重症化を防いだり、治療期間の短縮につなげられる可能性があります。

下痢は飼い主さまにとって「気付きやすい疾患」ですから、できるだけワンちゃん、ネコちゃんの排便の様子を確認するよう心がけてください。そして「単なる下痢」と軽視せずに、できるだけ早く受診されることおすすめします。

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