相模原どうぶつ医療センターBlog

“褒めるしつけ”で犬も人もハッピーに! ドッグトレーナーが勧める「オビディエンス」

愛犬が「遊びに夢中になると呼んでも来てくれない」「散歩中、リードを引っ張ってしまう」…そんなお悩みを抱える方は少なくないでしょう。そこで今回は「相模原どうぶつ医療センター」(神奈川県相模原市)でしつけを担当するドッグトレーナーの米田和輝が、自らも実践する「褒めるしつけ」の意義と方法についてご紹介します。

米田和輝

相模原どうぶつ医療センター しつけ担当 北海道出身。2002年国際ペットカルチャー総合学院卒業。専門学校講師、嘱託警察犬指導手を経て、14年より現職。現在はラブラドール・レトリバー(3代目)の育児に奮闘中。 《保有資格》 日本ドッグトレーナー協会A級ライセンス/ジャパンケネルクラブ公認訓練士/愛玩動物飼養管理士/RPTM Japan Bronze Basic Level Trainee

 

オビディエンスで絆が深まる

「待て」や「おすわり」など、ワンちゃんが様々な指示に従えるようになるための訓練を「オビディエンス」(服従訓練)といいます。

内容は多岐にわたり、定番の「お手」や「おかわり」、それに「おいで」や飼い主さまの歩調に合わせて横を歩かせる「ついて歩く」なども含まれます。一般に「しつけ」と呼ばれているものをイメージしていただければよいでしょう。

オビディエンスは「犬と人との絆を深めるためのコミュニケーション」であり、うまくいけば、意思疎通がよりスムーズにできるようになります。

例えば「ついて歩く」のトレーニングができているワンちゃんなら、散歩中は基本的に飼い主さまの横を歩きます。そして、匂いをかぎたい場所や遊びたい場面では、アイコンタクトで許可を求めてくる。そんなふうに、お互いにコミュニケーションがとれていれば、犬も人も安心して生活できるんです。

私はまた、オビディエンスを通じてワンちゃんが「どんなときでも落ち着いていられるようにすること」も重要だと考えています。

知らない人や車に興奮しないようになれば、散歩中の吠えの抑制などにつながり、ワンちゃんのストレスはもちろん、飼い主さまの負担も大幅に軽減されることでしょう。

そして「いつでも落ち着いていられる能力」は有事の際にも役立ちます。近年は「災害発生時の避難所に犬や猫を連れて行ってもよいのか」ということが問題になっていますよね。感染症やアレルギー、匂いなどの課題はありますが、吠えることなく人の指示にも従えるワンちゃんなら、受け入れてもらいやすいはずです。

 

「お互いに楽しく」が現代の主流

私も含めて、近頃のドッグトレーナーはトレーニング中に犬をほとんど叱りません。“叱らないしつけ”が主流になっているのです。一般の方がしつけをするときにも「ワンちゃんも飼い主さまも、互いに楽しむこと」を意識されるとよいでしょう。

1回のトレーニングは、つらく感じない5分程度の短い時間で、おもちゃやおやつを活用するのが理想的。指示に従わない場合に叱るよりも、人が求める行動をしたときに「褒めてあげる」「おやつをあげる」など、ポジティブな反応を繰り返し示すようにしてください。

そうすることで「この行動をすればいいことがあるな」と認識してくれますし、飼い主さまと一緒にいるのがより楽しくなるでしょう。そして、トレーニングが終わったら、思いきり楽しく遊んであげるといいですよ。

もちろん「人に飛びかかる」「勝手にエサをあさる」など、本当にやってはいけないことをした場合に「コラッ」と叱ることは問題ありません。しかし、いかなる場合でも、暴力は厳禁です。

オビディエンスのトレーニングについては、楽しくできるのなら何歳から始めても効果はあるといわれますが、やはり若い方が覚えは早いです。

 

まずアイコンタクト、褒める際は「言葉」が先!

まず最初に取り組んでほしいのが「アイコンタクト」。これは飼い主さまの目を見るよう習慣づけるトレーニングで、オビディエンスの基本になる、一番大事なこと。

アイコンタクトを教えるには、おもちゃやおやつなど「ワンちゃんが好きなもの」を使います。最初はそれを目と目の間に持ってきて、目が合えば褒めてあげる。これを何度か繰り返します。

次に、今度は目とは違うところに持っていき、それでも目を見たら「オッケー!」などと褒めてあげて、ご褒美のおやつをあげてください。

飼い主さまによっては、ご褒美をあげてから声をかけてあげる方もいます。でも、ご褒美の後に言葉をかけても、言葉に対して反応しないことが多いんです。食べ始めたら、もう聞いてくれませんから(笑)。

まずは褒めて、次にご褒美をあげる…これを学習すると、言葉も覚えるようになります。

 

「やればいいことがある」をインプット

オビディエンスで教える行動のうち、特に早いうちから始めたいのが「おいで」です。愛犬との暮らしには、呼んでも来てくれないと困る場面が多々ありますからね。

この「おいで」は簡単そうに思えて、意外に難しいんですよ。大好きなおもちゃで遊んでいたり、他の人からおやつをもらっていたりするときでも、飼い主さまが呼んだら来るように教えなければいけないわけですから。

おやつを手に持って「おいでー」と呼び、来たら言葉で「グッド!」と褒めて、おやつをあげる。呼んでないのに来たらあげない、呼んで来たらあげる。これで「おいで」の言葉と「ついていく」という行動をセットで覚えますので、何度も繰り返してください。

「ママ(ご夫婦の奥さま)の言うことしか聞かない」といったことを防ぐために、複数の人間でやるのもいいですよ。呼んでいない人にねだりに行ってもおやつをあげないで、来たらすぐにあげましょう。

おやつは圧迫感を与えないよう、上からではなく、体を反らせるなどして出来るだけ目線を下げてあげるのがポイント

「おすわり」も同じ要領で教えられます。おやつやボールなどのご褒美で視線を上に誘導して、自然に腰が落ちたところで「グッド!」などと褒めてください。そうすれば首をリードで引っ張ったり、お尻を手で押さえたりしなくても大丈夫です。

外で散歩ができるようになる頃には「ついて歩く」も覚えさせた方がいいですね。リードを引っ張りながら散歩をしている飼い主さまをよく見かけます。でもリードは本来、万が一の場合に備えてつけるものであり、動きをコントロールするためのものではありません。

楽しい散歩のためにもぜひ、飼い主さまの歩調に合わせて、横を歩けるようにしてあげてください。

「ついて歩く」を覚えさせるコツも他と同じで「やればいいことがある」と認識させること。おやつを持って歩き、体の横についたらあげる。そうして「近くを歩けばおやつがもらえる」とインプットできれば、歩調を合わせてくれるようになりますよ。

うまくできるようになったら、近くにボールなどの気になるものを置いたり、家の外でやったりと、いろんなシチュエーションで対応できるようにするとよいでしょう。

「そばにいるべきとき」と「そうでないとき」のメリハリをつけるのも重要です。遊んでいい場所ではアイコンタクトとともに「行っておいで」と伝え、自由にさせてあげましょう。

「待て」は、ワンちゃんから少し離れて立ち、座ったら褒めて、ご褒美をあげることで覚えさせます。

 

プロのトレーナーに託す場合のポイント

ワンちゃんのしつけをプロのトレーナーに依頼する方もいると思いますが、理解しておいてほしいことが2つあります。

まず1つ目は「この記事の内容と担当のトレーナーの言うことが違っていても、基本的な考え方は同じ」ということ。

「ついて歩く」を例にとると、トレーナーによって「真横にいなければならない」「飼い主より後ろにいさせるべき」「近くにいて勝手な行動をしないのならば、どこにいても問題ない」など、主張が異なると思います。

ですが、「リードで引っ張ってはいけない」という見解は一致するはずですし、「興奮しても飼い主さまのそばを離れないようにするため」という目的が変わることもないでしょう。

「何のためにこのトレーニングをするのか」という本質が理解できていれば、様々な意見に困惑させられずに済みます。

2つ目は「プロに任せたとしても、飼い主さま自身もワンちゃんとコミュニケーションをとる必要がある」ということです。

これを怠ってしまうと“トレーナーの指示には従うけれど、飼い主さまの指示には従いにくい子”に育ってしまいかねません。

ご自身も可能な範囲でトレーニングに加わるようにすれば、より絆が深まるでしょう。

繰り返しになりますが、オビディエンスは飼い主さまとワンちゃんがお互いに楽しく過ごすために行うものです。どうか「褒めるしつけ」を実践して“犬も人も幸せな生活”を目指してください。

TOP