相模原どうぶつ医療センター診療科紹介【皮膚科編】「優しくケアして、スキンシップしたくなる肌へ」

12の診療科を備え、犬と猫の様々な疾患に対応している「相模原どうぶつ医療センター」(以下、センター)。今回は治療から飼い主さまへのケア指導までを行っている「皮膚科」について、獣医師の小池杏奈(写真左)とトリマーの顕谷友起枝(同右)が紹介します。

小池杏奈 獣医師

所属学会・日本獣医皮膚科学会、日本大学附属動物病院皮膚科研修医。実家では猫を5頭(元野良猫・保護猫)、犬を1頭(ヨークシャーテリア)を飼育。現在も猫2頭と暮らす。

顕谷(あらや)友起枝 トリミング担当

兵庫県神戸市出身。入社7年目(2019年12月現在)。愛犬(写真右)はシルバートイプードルの"ゆのぴ"。趣味はグルメ旅と音楽鑑賞。

 

飼い主さまのメンタルにも影響しかねない動物の皮膚疾患

―― 小池先生は皮膚科の専任なのですか?

小池 いえ、私は一般診療をしながら、皮膚科の担当医を務めています。皮膚科の疾患は症状や危険度に幅があるので、治りが悪く専門的な検査が必要になるときや、他院からの紹介をお受けするとき、それに飼い主さまが「スキンケアの方法を根本的に見直したい」と望んでおられるケースでは、私が皮膚科として担当することになっています。

―― 毎日何頭くらいの動物を診られるのでしょうか?

小池 当センターにおける皮膚科の年間受診数は300件ほどですから、だいたい1日に1頭くらい診ていることになりますね。一般的に、気温と湿度が高くなる6〜8月は皮膚にトラブルが起きやすいんです。

―― 犬や猫にはどんな皮膚疾患が多いのでしょうか?

小池 人間と同じでアレルギー性皮膚炎などは多いですね。ノミが原因となるアレルギーでは、背中一面がハゲてしまうこともあります。柴犬が患いやすいアトピー性皮膚炎だと毛が抜けて、首の下や脚の内側など擦れやすい箇所はただれたようになります。あと、どうしても掻いてしまうんですよね。その掻いているしぐさや音が気になって、精神的に参ってしまう飼い主さまもいらっしゃいます。

―― 食生活が影響することもありますか?

小池 そうですね、ゴハンを変えたのをきっかけに皮膚炎が生じるとか、涙焼け(目の周りの毛が涙で濡れ続けることで変色すること)がひどくなるということはよくあります。ワンちゃんたちにも食物アレルギーがありますし。ただ、原因となる食品は個体によって異なります。近年は食物アレルギーを持つ動物用のゴハンというのがたくさん売っていて、ペット用品店やホームセンターでも数え切れないほどの商品が並んでいます。その子に合っているかどうか分からないときは、獣医師に相談されるといいと思います。

 

「カット」や「シャンプー」でトリマーも協力

―― センターではどのような治療を行うのですか?

小池 塗り薬や飲み薬などの投薬はもちろん、サプリメントを使用することも多いですね。それに、イボや腫瘍ができている場合は取りますし、根の深いものであれば、外科の先生と協力して手術を行うこともあります。また、ホルモンの影響で生じた脱毛が、避妊や去勢の手術で治るということもあります。

―― トリマーさんと連携することもあるそうですね。

小池 ええ、先日もホテルサービスの利用でお預かりした子の皮膚の状態が悪かったので「毛を刈ってシャンプーした方が治りが早い」と判断して、顕谷さんに協力してもらいました。また、肌がひどく汚れた子には、何十種類とある中から「このシャンプー剤で」と指示を出してやってもらうことがあります。

―― トリマーというと“動物版の美容師さん”のような仕事をイメージしますが。

顕谷 確かに、ペットサロンで働くトリマーの仕事内容は美容師に近いですね。一方で、当センターのような動物病院にやってくるのは、高齢のために普通のサロンで受けてもらえなかったり、皮膚の治療のために薬浴(薬用シャンプーを使った洗浄やマッサージ)が必要だったりする子たちなので、美容ではなく、医療の観点からケアをすることが求められます。シャンプーも殺菌や寄生虫の予防を目的に行いますし、毛をカットする際も「治療をしやすくする」ということを意識しますね。

小池 例えば、心臓の悪い子は入浴やシャンプーで興奮したり、血圧が上がったりして体調を崩すことが多いんです。だから皮膚に問題がなくても、オペ後や心臓に不安がある子は顕谷さんたちにお願いすることになります。

顕谷 専属のトリマーがいるのは、イオンペットが運営する動物病院でも当センターを含めて全国で2病院だけなんです。

―― 皮膚に問題がある子のシャンプーは大変なのですか?

小池 一度洗うだけではなく「クレンジングして流して、シャンプーして流して、保湿剤を使って…」とかなり手間をかけます。それに私から「◯分でお願いします」と時間まで細かく指定して依頼することが少なくありません。

 

動物たちのデリケートな肌に“刺激”は禁物!

―― 診療の流れについてお聞かせください。

小池 問診から始まりますが、診察の間はほとんど話してますね。皮膚科の問診では「何を食べている」とか「どんなシャンプーを使っている」とか、本当にたくさん喋るんです。無口な先生なら、つらいかもしれません(笑)。いろいろ伺った結果、疑われる病気が絞り込まれてきたら、皮膚や血液を採取して検査を行います。

―― その後、先ほど伺ったシャンプーなども行うわけですね。

小池 そうですね。でもシャンプーについては動物病院でやって終わりということではなく、帰宅された後も定期的に行ってもらわないといけませんから、トリマーさんにお家でのやり方の指導をお願いすることがあります。

―― シャンプーの指導の内容は?

顕谷 犬や猫の肌は刺激に弱く、摩擦によってすぐ傷付いてしまうので、シャンプー剤をよく泡立てて優しく洗うようお願いしています。シャンプー剤を薄めすぎると泡立ちにくくなります。また、温風を患部に当てると乾燥しすぎたり、火傷につながることもあるので、ドライヤーを使用する際は時間はかかりますが、低温で乾かしていただくようアドバイスします。

小池 犬や猫の体は人間と違って毛に覆われている分、皮膚がすごく薄くて、デリケートなんですよ。

―― 診察で大変なことは?

小池 毛量の多い子はかき分けながら診察しなければいけませんが、性格的にじっとしているのが難しい子だと大変です。特にかゆい所などはなかなかきちんと見せてくれないので、他のスタッフに押さえてもらったり、いったん別室でお預かりして落ち着いたところでしっかり見せてもらうこともあります。

―― 診療や治療に使用する機器についてご紹介ください。

小池 当センターでは最近「オトスコープ」という、耳の中を見る内視鏡のような検査機器を導入しました。これを用いれば、複雑な構造をしている動物の耳の中をリアルタイムで、大きな画面で見ることができます。CT検査だけを使用していた従来に比べて、検査の精度が格段に上がりました。顔付近は神経の多いデリケートな場所なので、できるだけリスクの低い治療方法を検討したいのですが、これまでは外耳炎などで、耳道を全部取り去る「全耳道切除」という手術をしないといけないケースもありました。それがオトスコープ導入後は、全耳道切除を行う前に、侵襲の少ない検査を提案することが可能になったのです。

オトスコープを手に説明する小池獣医師

 

しぐさの観察とスキンシップで早めの発見を

―― 犬や猫の飼い主さまにメッセージを。

小池 例えば、後ろ脚で耳を掻いていたり、前脚を噛んでいたり…そうした普段と違うしぐさに気付いたら、早めに受診するよう心がけてください。たまに、かさぶたを含むフケが落ちているのを見て皮膚疾患に気付かれる方もいます。また、毛に覆われているので何ともないように見えても、実は皮膚で問題が生じているということがあります。遠目に見るだけではなく、たまに撫でたり、毛をかき分けて地肌を見たりするといいと思います。

顕谷 正しい方法で「薬浴」を行うと、皮膚の症状はかなり変わってきます。薬用シャンプーを使ってはいるけど、あまり効果が実感できないという飼い主さまがいたら、ぜひ一度当センターで薬浴を体験していただきたいと思います。ワンちゃんやネコちゃんの肌が清潔で健やかな状態を取り戻すと、自然と飼い主さまのスキンシップの回数も増えますし、そんな光景を見ると私たちも嬉しくなります。

―― ありがとうございました。

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