相模原どうぶつ医療センターBlog

「改正動物愛護法」で犬と猫に対するマイクロチップ装着が義務化。その機能、メリットは?

2019 年 6月12日、国会で「改正動物愛護法」が成立しました。この法律は、犬や猫への「マイクロチップ装着」を義務付けることなどが柱となっており、動物愛護の観点からは大きな進歩と評価されています。そこで今回はマイクロチップの機能や装着のメリット、そして災害時の有用性などについてお話しします。

相模原どうぶつ医療センター 椿直哉(センター⻑/獣医師/MBA)

神奈川生まれの東京育ち。2004 年北里大学獣医学科卒業。一般開業動物病院勤務医、日本動物高度医療センター総合診療科勤務医、東京農工大研修医等を経て、2010年より現職。趣味は「猫と遊ぶこと」。

そもそもマイクロチップとは?

マイクロチップは「直径1~2mm、⻑さ8〜12mmの円筒形のガラスまたはポリマーのカプセルで包まれた小さな電子標識器具」とされています(日本獣医師会 Webサイトより)。これを犬・猫の背中のあたりに挿入しておくと、専用のリーダーでその子の固有の番号を確認することができます。

マイクロチップの挿入器(左)とリーダー。挿入器の先端にマイクロチップが付いている。

番号は15桁で、最初3桁が「国(日本は392)」、次の2桁が「 動物の種類(ペットは14)」、続く2桁は「メーカー」を表し、残り8桁が「個体番号」となっています。1つのメーカーで最大約1億頭まで登録できる計算ですが、2018年時点における国内のワンちゃんの飼育 頭数は約890万頭、ネコちゃんは約964万頭(一般社団法人ペットフード協会 平成 30 年全国犬猫飼育実態調査)ですから、登録数には まだ余裕がありそうですね(笑)。ちなみにマイクロチップの装着数は犬で158万頭、猫で44万頭(2019年7月現在)。割合で言うとまだ、犬で約17.7%、猫で約4.5%しか装着していないことになります。

■なんの役に立つの?

マイクロチップを装着することで、動物たちが迷子になったり、盗難や災害、事故に遭った りしたとき、身元を速やかに証明することができます。つまり「もしものときに役に立つ」ということなのですが、その一方で「飼育放棄」や「しつけの不行き届き」など、動物を巡 る社会問題の解決に向けても、ある程度の効力が期待されているようです。動物たちを迎えた飼い主として、最後まで一緒に暮らしていくことは最低限の責務ですが、マイクロチップはそれを担保するものでもある...ということでしょうか。

マイクロチップが登場する前は?

動物にとっては、万が一迷子になっても比較的早期に飼い主のもとへ戻るための助けになるマイクロチップですが、その登場以前から動物たちの身元を知らせる役割を果たしてきたのが「犬鑑札」と「注射済票」です。

左から犬鑑札、注射済票、犬標識。デザインは自治体によって異なります。

狂犬病予防法では、狂犬病注射を打った動物に「鑑札と注射済票を装着すること」が義務付けられています。しかし残念なことに、いま街で見かけるワンちゃんの多くは、これらを身に付けていません。背景には「小型犬の首輪につけると重そう」とか「ジャラジャラと邪魔そう」、ワンちゃんの気質によっては「嫌がって噛み砕いてしまう」といった問題があるようです。

かつては迷子の犬が動物病院に連れてこられると、首輪に付けられた鑑札の番号を保健所に伝えて飼い主さんを探すということができた(首輪が取れて脱走してきた子は無理ですが...) わけですが、最近ではなかなか難しくなりました。愛するワンちゃんたちを無事に帰宅させるためにも、鑑札と注射済票を装着をしていただきたいと思います。

大規模災害発生時にも活躍?

環境省がまとめたデータ (環境省自然環境局 犬猫の引取及び負傷動物の収容状況 平成 29 年度資料)によると、東日本大震災の発生に伴って「迷子」として保護された犬たち約2万8千頭のうち、およそ1万2千頭 (43.4%)が飼い主の元に帰れたそうです。そのうち、鑑札または迷子札を付けていたのは85頭で、全頭(100%)が無事に帰れたとのことでした。

一方、猫は約1万3千頭が迷子として保護されたものの、飼い主の元へ帰れたのは235頭 (1.7%)に過ぎません。

マイクロチップについても同時に調査されていますが、その数については正確に把握されておらず、「装着していても登録されていなかった」という事例もあったようです。もし、全頭がマイクロチップを装着し、きちんと登録されていたら、飼い主の元へ帰れた犬猫はもっと多かったかもしれません。ちなみにマイクロチップ装着が確認できた猫は0頭でした。

装着したら安心...ではありません!

我が家の猫も一度、家から出ていってしまったことがあります。なんと、台所の引き戸の窓 を自分で開けて外出したようです。捜索開始からおよそ30分後、表の駐車場をウロウロ、クンクンしているところを発見されて事なきを得たのですが、その30分間の私は本当にどうして良いか分からないパニック状態。名前を呼びながら走り回るしかありませんでした。こうしたケースを思うと、やはりマイクロチップは必要なのかなぁと思います。

しかし、マイクロチップが必ずしも犬猫を守ってくれるとは限りません。マイクロチップが役立つのは「運良く人間に保護されて、マイクロチップリーダーのある動物病院や保健所に 連れて行ってもらい、飼い主が判明したとき」です。

当センターでも、交通事故で運び込まれたワンちゃんにリーダーをかざし、「ピッ」と反応したことがありました。そのケースではすぐに飼い主様が見つかりはしましたが、やはり大 切なことは、そもそも事故には遭わせないことです。散歩で外に出るときにはリードを2本、ネコちゃんなら家から出られないよう、2重3重の対策を講じて置くことをおすすめします。

まとめ

法律により、子犬と子猫へのマイクロチップの全頭装着が義務付けられることになりました(施行は1年以内)。すでに飼われているワンちゃん、ネコちゃんへの装着は「 努力義務 」ということになっています。体への負担はほぼゼロです。デメリットを挙げるとすれば、お財布への打撃でしょうか...。かかりつけの先生とご相談いただき、装着を前向きにご検討いただければ幸いです。

おまけ

最近は忘れ物防止のIoTタグが市販されていますよね。それを動物に応用したものも発売されていて、動物のリードや首輪につけられる小型のものもあります。これにより、専用アプリから現在地を知ることができるのです。いいですよね。近い将来、この機能を持ったマイクロチップが登場することを願っています。

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